生存権訴訟の終結にあたって−全国・北海道の弁護団が声明を発表

投稿日 : 2010-04-10

「北海道生存権訴訟の終結にあたって」

昨日、全国生存権訴訟の原告団及び弁護団と、国(厚生労働省)との間で母子加算に関する基本合意が締結されたことにより、札幌地裁と釧路地裁に係属していた「北海道生存権訴訟」は、本日、取下げにより終結した。
北海道生存権訴訟は、「母子加算廃止」が、憲法第25条によって保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害するだけでなく、子どもの権利条約で保障されている「子どもの成長・発達する権利」をも侵害することを強く主張して処分の取消を求めた点に特徴がある。昨年来、日本における「子どもの貧困」が憂慮すべき状態にあることが指摘されている。日本の「子どもの貧困率」は、14.3%、つまり7人に1人の子どもが貧困状態にある。そして、両親と子どものみの世帯の貧困率が11%であるのに、母子世帯では66%に跳ね上がる。日本のひとり親世帯の貧困率は、先進国の中ではトルコに次いでワースト2位という酷さなのである。
それにも関わらず、何らの対策をこうじることなく母子加算を廃止することは、「子どもの貧困」状態を更に悪化させるだけの「亡国の政策」といわなければならない。幸い、昨年8月30日に実施された総選挙によって政権交代が実現したことを契機として、昨年12月1日付で母子加算が復活し、さらに本年4月1日以降も母子加算が継続することとなったが、これは、全国で繰り広げられた国民的運動と裁判によって、厚生労働省をそこまで追い込んだ結果である。
日本の福祉政策には、子どもと高齢者に対する優しさがない。子どもには希望を、高齢者には安心を保障するのが政治の責任である。我々は、基本合意が守られ、そして老齢加算が復活するまで、全国の仲間と連帯して支援を続けることを誓う。
2010年4月2日  北海道生存権訴訟弁護団

声明文「母子加算訴訟の終結にあたって」

本日、全国生存権訴訟の原告団及び弁護団は、国(厚生労働省)との間で母子加算に関する基本合意を締結し、母子加算訴訟の終結を図ることにした。
全国生存権訴訟は、生活保護を利用する高齢者世帯及び母子世帯が、憲法第25条によって保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」の中身を問い、国によって廃止された老齢加算ないし母子加算の復活を求めて全国10地裁に提起した行政処分取消訴訟である。生活保護を利用してきた高齢者世帯及び母子世帯は、それぞれの加算の削減・廃止によって「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る生活を余儀なくされ、すでに老齢加算訴訟の原告が全国各地で亡くなられている。
しかし、昨年8月30日に実施された総選挙によって政権交代が実現すると、「コンクリートから人へ」という基本方針を掲げる現政権は、母子加算の復活を三党連立政権合意に盛り込み、昨年12月1日付で母子加算を復活させ、さらに本年4月1日以降も母子加算を継続させることを決定した。また、昨年12月11日には、憲法第25条で保障する国民の最低限度の生活とは何かを検討するために、厚生労働省においてナショナルミニマム研究会が設置された。
弁護団は、現政権の英断を歓迎し、母子加算の復活という目的が果たされたことから、本年3月4日、国(厚生労働省)に対して、母子加算訴訟の終結に向けた協議の申し入れを行った。その後、本日まで1ヶ月余り、強い憤りと勇気をもって訴訟を提起した全国生存権訴訟の原告全員の思いを原点に、我が国における高齢者世帯や母子世帯の窮状を踏まえた合意を求め、国(厚生労働省)との協議を行ってきた。その結果、本日、母子加算訴訟を提起した目的及び趣旨に見合う合意内容に達することができたため、本基本合意の締結に至ったものである。
本基本合意において、国(厚生労働省)は、(1)母子世帯の窮状を踏まえて母子加算の継続を約束するのみならず、(2)ナショナルミニマム研究会における調査研究等を踏まえて高齢者世帯や母子世帯を含む国民の最低生活水準に関する検証を行い、憲法25条の理念に基づく生存権の保障に努めるとしている。
本基本合意の締結によって母子加算訴訟は終結に向かうことになるが、格差と貧困が広がった我が国の現状において、憲法第25条の理念がすべての人に実現されるための課題は山積している。特に、老齢加算が廃止されたままの状態で窮状に陥り、日々生命を削られている高齢者の生存権保障は喫緊の課題である。全国生存権訴訟弁護団は、本基本合意を新たな出発点として、憲法25条の理念に基づくナショナルミニマムの確立と老齢加算の復活を目指し、さらに運動を広げながら、老齢加算訴訟の闘いを続ける決意である。 以上
2010年4月1日  全国生存権訴訟弁護団

弁護団声明全国・北海道(PDF 142kb)

 


 

生活保護制度を良くする会

事務局:北海道生活と健康を守る会連合会
札幌市西区八軒8条東5丁目4−20
TEL 011−736−1722 FAX 011−736−1688
E-mail:doseiren@joy.con.ne.jp

 

Copyright(c)2008 - 生活保護制度を良くする会 本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。